概要

窓は住宅の中で最も熱の出入りが大きい部位です。冬の暖房時には室内の熱の約58%が窓から流出し、夏の冷房時には外部からの熱の約73%が窓から侵入するというデータがあります※1。そのため、窓の断熱性能を高めることは、住宅全体のUA値を改善するうえで最も効果的な手段の一つです。

窓の断熱性能は**Uw値(窓の熱貫流率)**で表され、単位は W/(m²・K) です。値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを意味します。Uw値はサッシの素材とガラスの構成の組み合わせで決まります。

サッシの素材比較

サッシ(窓枠)の素材は、窓全体の断熱性能に大きく影響します。サッシの面積は窓全体の20〜30%程度ですが、素材による熱伝導率の差が非常に大きいためです。

主なサッシ素材と熱伝導率

サッシ素材熱伝導率(W/(m・K))特徴
アルミ約200軽量・安価・耐候性高い。断熱性は最も低い
アルミ樹脂複合室外側アルミ + 室内側樹脂。コストと性能のバランス
樹脂(PVC)約0.17アルミの約1/1000の熱伝導率。断熱性能が高い
木製約0.12熱伝導率が最も低い。メンテナンスが必要

アルミの熱伝導率は樹脂の約1,000倍です。アルミサッシは軽量で耐久性に優れますが、断熱性能は著しく低く、冬には窓枠の表面温度が下がって結露の原因になります。

現在の高性能住宅では、樹脂サッシが標準的な選択肢になりつつあります。省エネ基準の適合義務化やZEH基準の普及に伴い、アルミサッシのみでは基準を満たすことが難しくなっています。

サッシ素材別のUf値(サッシ部分の熱貫流率)の目安

サッシ素材Uf値の目安(W/(m²・K))
アルミ6.0〜7.0
アルミ樹脂複合3.0〜4.5
樹脂1.3〜2.3
木製1.0〜1.8

ガラスの種類

窓ガラスの構成は、窓の断熱性能を決める最大の要素です。現在の住宅用ガラスには以下の種類があります。

単板ガラス

1枚のガラスで構成されます。熱貫流率は約6.0 W/(m²・K) と非常に高く、現在の新築住宅で採用されることはほぼありません。築年数の古い住宅で見られます。

複層ガラス(ペアガラス)

2枚のガラスの間に中空層(乾燥空気またはガス)を設けた構成です。中空層が断熱層として機能し、単板ガラスに比べて断熱性能が大幅に向上します。

構成ガラスの熱貫流率の目安(Ug値)
複層ガラス(空気層)2.8〜3.0 W/(m²・K)
複層ガラス(アルゴンガス層)2.5〜2.7 W/(m²・K)

中空層に空気より熱伝導率の低いアルゴンガスを封入することで、さらに断熱性能が向上します。

Low-Eガラス

Low-E(Low Emissivity=低放射)ガラスは、ガラスの表面に特殊な金属膜をコーティングしたものです。この金属膜が遠赤外線(熱線)の放射を抑制し、断熱性能を高めます。複層ガラスの片側にLow-Eコーティングを施すのが一般的です。

構成Ug値の目安
Low-E複層ガラス(空気層)1.5〜1.8 W/(m²・K)
Low-E複層ガラス(アルゴンガス層)1.2〜1.5 W/(m²・K)

トリプルガラス

3枚のガラスの間に2つの中空層を設けた構成です。Low-Eコーティングとアルゴンガス(またはクリプトンガス)封入を組み合わせることで、2026年時点で最高レベルの断熱性能を実現します。

構成Ug値の目安
トリプルガラス(Low-E2枚 + アルゴン)0.6〜0.9 W/(m²・K)
トリプルガラス(Low-E2枚 + クリプトン)0.5〜0.7 W/(m²・K)

トリプルガラスはペアガラスに比べて重量が増加するため、サッシの強度やハンドルの操作性に影響する場合があります。

スペーサーの種類

複層ガラスやトリプルガラスでは、ガラス間の中空層を一定の間隔に保つ部材を「スペーサー」と呼びます。スペーサーの素材はガラス端部(エッジ)の断熱性能と結露リスクに影響します。

スペーサー素材特徴
アルミスペーサー従来の標準的な素材。熱伝導率が高く、ガラス端部に熱橋(ヒートブリッジ)が生じる
樹脂スペーサー(ウォームエッジ)熱伝導率がアルミの約1/1000。ガラス端部の断熱性が向上する

アルミスペーサーはガラス端部に熱の通り道をつくるため、冬にガラスの周縁部が冷えて結露が発生しやすくなります。樹脂スペーサー(ウォームエッジスペーサー)はガラス端部の温度低下を抑え、結露リスクを低減します※2。

ガラスの中央部がLow-Eコーティングやガス封入で高い断熱性能を持っていても、スペーサーがアルミであればエッジ部分から熱が逃げます。窓全体の断熱性能を高めるうえで、スペーサーの素材はサッシやガラスと同様に重要な構成要素です。

窓全体の熱貫流率(Uw値)の目安

Uw値はサッシとガラスを合わせた窓全体の熱貫流率です。同じガラスでもサッシの素材によってUw値は大きく変わります。

サッシ素材ガラス構成Uw値の目安
アルミ複層ガラス4.0〜4.6 W/(m²・K)
アルミ樹脂複合Low-E複層(アルゴン)2.3〜2.7 W/(m²・K)
樹脂Low-E複層(アルゴン)1.3〜1.6 W/(m²・K)
樹脂トリプル(Low-E + アルゴン)0.8〜1.1 W/(m²・K)
木製トリプル(Low-E + クリプトン)0.6〜0.9 W/(m²・K)

省エネ基準(断熱等級4)を満たすためには、6地域(東京・大阪等)でアルミ樹脂複合サッシ + Low-E複層ガラス以上が現実的な選択肢です。ZEH基準(断熱等級5)以上を目指す場合は、樹脂サッシ + Low-E複層ガラスが基本線となります。

日射取得型と日射遮蔽型の使い分け

Low-Eガラスには「日射取得型」と「日射遮蔽型」の2種類があり、Low-Eコーティングの位置によって性質が異なります。

日射取得型

Low-Eコーティングを室内側ガラスの中空層側に施したものです。太陽の光と熱を室内に取り込みやすい特性があります。

  • 適した方角: 南面
  • 適した地域: 寒冷地〜温暖地
  • 効果: 冬の日射熱を積極的に取り込み、暖房負荷を低減する

日射遮蔽型

Low-Eコーティングを室外側ガラスの中空層側に施したものです。太陽の熱を反射して室内への侵入を抑える特性があります。

  • 適した方角: 東面・西面・場合により北面
  • 適した地域: 温暖地〜暑熱地
  • 効果: 夏の日射熱の侵入を抑え、冷房負荷を低減する

方角別の使い分けの目安

方角推奨タイプ理由
南面日射取得型冬の日射を取り込み暖房負荷を下げる。夏は庇やシェードで遮蔽
東面・西面日射遮蔽型朝・夕の低い角度の日射は庇では遮れないため、ガラスで遮蔽
北面日射遮蔽型直射日光は少ないが、日射取得のメリットもないため遮蔽型が無難

南面の窓は冬の日射取得量が大きいため、日射取得型を選ぶことで暖房エネルギーの削減効果が期待できます。ただし、夏の日射を遮るために軒(庇)の出幅を確保する、または外付けシェード・すだれなどの日除けを併用することが前提です。

UA値の記事でも解説しているとおり、UA値だけでは住宅の温熱環境は評価できません。窓の性能(Uw値)と日射取得・遮蔽のバランスを考慮した設計が、冬暖かく夏涼しい住宅を実現する鍵となります。

まとめ

窓は住宅の断熱性能において最も弱い部位であり、サッシの素材とガラスの構成によって性能が大きく変わります。現在の新築住宅では、樹脂サッシ + Low-E複層ガラス以上が標準になりつつあります。また、Low-Eガラスの日射取得型と日射遮蔽型を方角によって使い分けることで、冬の暖房負荷と夏の冷房負荷の両方を抑えることが可能です。窓の選択はUA値に直結するため、省エネ基準C値とあわせて総合的に検討しましょう。

出典

  1. 一般社団法人 日本建材・住宅設備産業協会「住宅の開口部からの熱の出入り」https://www.kensankyo.org/syoene/qanda/mado/a_9.html
  2. AGC「デューカットIIS」— 樹脂スペーサーによる結露防止効果 https://www.asahiglassplaza.net/products/dewcut/