概要
C値(相当隙間面積)は、住宅の気密性能を表す指標です。建物全体の隙間面積の合計を延べ床面積で割った値で、単位は cm²/m² です。値が小さいほど隙間が少なく、気密性能が高いことを意味します。
C値1.0であれば、延べ床面積1m²あたり1cm²の隙間があることを示します。例えば延べ床面積120m²の住宅でC値1.0の場合、建物全体の隙間面積は120cm²(約11cm角の穴に相当)となります。
C値の測定方法
C値は設計段階の計算では求められません。実際に建てた建物で「気密測定試験(ブロアドアテスト)」を行って測定します※1。 気密測定技能者という民間資格があり、測定方法は規格化されています。
測定の流れ
- 建物のすべての開口部(窓・ドア・換気口など)を閉じる
- 玄関ドアなどの開口部に送風機(ブロアドア)を設置する
- 送風機で室内の空気を強制的に排出し、室内外に気圧差をつくる
- 気圧差と風量の関係から、建物全体の隙間面積を算出する
- 隙間面積を延べ床面積で割ってC値を得る
測定は通常、断熱・気密工事が完了した段階(中間測定)と、完成後(完成測定)の2回行います。中間測定で問題があればカバーするための施工が可能なため、2回測定することが望ましいとされています。
測定費用の目安
気密測定の費用は1回あたり5万〜10万円程度です。測定業者が限られる地域では出張費が加算される場合もあります。
なぜC値に法的基準がないのか
かつて1999年の省エネ基準(次世代省エネルギー基準)では、C値の基準が設けられていました。寒冷地(1・2地域)で2.0cm²/m²以下、その他の地域で5.0cm²/m²以下という値です※2。
しかし、2009年の省エネ基準改正時にC値の基準は削除されました。主な理由として、以下が挙げられています。
- C値は実測値であり、建築確認(設計段階の審査)になじまない
- UA値のように設計段階で計算できる指標を重視する方向へ移行した
このため、現行の建築物省エネ法にはC値に関する規定がありません。ただし、C値が不要になったわけではなく、気密性能が住宅の省エネ性能に重要であることは変わりません。
目安となるC値
法的基準はありませんが、住宅の性能を確保するうえで以下の数値が目安とされています。
| C値 | 評価 | 補足 |
|---|---|---|
| 5.0以下 | 旧省エネ基準レベル(一般地域) | 1999年基準の最低ライン |
| 2.0以下 | 旧省エネ基準レベル(寒冷地) | 1999年基準の寒冷地ライン |
| 1.0以下 | 高気密住宅の目安 | 計画換気が正常に機能するライン※4 |
| 0.5以下 | 高気密住宅として十分な水準 | HEAT20推奨値(C値0.7±0.2)の下限※5 |
| 0.2以下 | トップクラスの気密性能 | パッシブハウス基準(n50≤0.6)からの換算目安※6 |
一般的に、C値1.0を下回ることが計画換気を正常に機能させるための最低条件とされています※4。第3種換気の場合、C値が大きい(隙間が多い)と給気口以外の隙間から空気が入り、計画通りの換気経路が実現しません。
気密性能が重要な3つの理由
1. 計画換気の実現
2003年の建築基準法改正により、すべての住宅に24時間換気システムの設置が義務付けられています※3。しかし、建物に隙間が多いと換気システムが設計通りに機能しません。
例えば第3種換気では、排気ファンで室内の空気を排出し、給気口から新鮮な外気を取り入れます。C値が大きいと、給気口ではなく壁や床の隙間からショートカットして空気が入り込み、居室の空気が十分に入れ替わらない「換気のショートサーキット」が発生します。
2. 結露の防止
冬季に暖かい室内の空気が壁の隙間から壁体内に侵入すると、外気で冷やされた部分で結露が発生します(壁体内結露)。壁体内結露は断熱材の性能低下、木材の腐朽、カビの発生を引き起こし、建物の耐久性を大きく損ないます。
気密性能を高めて気密シート(防湿層)を適切に施工することで、室内の湿った空気が壁体内に侵入するのを防ぎ、壁体内結露のリスクを低減できます。
3. 断熱性能の発揮
UA値で示される断熱性能は、建物に隙間がない前提で計算されています。実際には隙間から暖気が逃げ、冷気が侵入するため、気密性能が低いと断熱材の効果が十分に発揮されません。
高いUA値を目指して断熱材を厚くしても、C値が大きければ冬の室温低下や光熱費の増加を招きます。断熱と気密は車の両輪であり、どちらか一方だけを高めても効果は限定的です。
C値を確認するには
C値は設計図面からは算出できないため、実測するしかありません。建築会社に気密測定の実施を依頼する際は、以下の点を確認しましょう。
- 標準で気密測定を行っているか: 高気密住宅を掲げる会社であれば、全棟測定を標準としていることが多いです
- 中間測定と完成測定の両方を行うか: 中間測定で問題を検出・修正できるため、2回の測定が理想的です
- C値の保証値があるか: 会社によっては「C値0.7以下を保証」のように目標値を明示している場合があります
- 第三者機関による測定か: 施工者自身ではなく、独立した測定業者による測定のほうが客観性が高いです
まとめ
C値は住宅の気密性能を示す実測値です。2009年に省エネ基準から削除されましたが、計画換気の実現、結露防止、断熱性能の発揮のために不可欠な要素です。高断熱住宅を検討する際は、UA値とあわせてC値にも注目し、気密測定の実施を建築会社に確認することをおすすめします。
出典
- 一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構「住宅の気密性能試験方法(JIS A 2201)」
- 国土交通省「住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」(1999年次世代省エネルギー基準)
- 国土交通省「シックハウス対策に係る建築基準法改正の概要」https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/sickhouse.html
- 日本住環境株式会社「教えて!気密についてのギモン」— C値1.0以下が計画換気の前提条件とされる根拠 https://jvia.jp/column/12/
- 一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会「HEAT20設計ガイドブック2021」— 外皮性能水準に応じた気密性能としてC値0.7±0.2を推奨 http://www.heat20.jp/gidebook2021_top.html
- Passive House Institute「Blower door test」— パッシブハウス認定基準 n50≤0.6回/h https://passipedia.org/planning/airtight_construction/general_principles/blower_door_test
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