概要

土地を購入する際、その土地に「どんな建物を、どのくらいの大きさで建てられるか」は法律で定められています。土地探しの段階でこれらの制限を理解していないと、購入後に「思ったより大きな家が建てられない」「3階建てにできない」といった問題が起こりえます。

この記事では、都市計画法に基づく用途地域の種類と、建築基準法が定める建ぺい率・容積率・斜線制限・日影規制などの建築制限を整理します。

用途地域とは

用途地域は、都市計画法に基づいて市区町村が指定するもので、そのエリアに建てられる建物の種類や規模を定める制度です※1。全部で13種類あり、大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3グループに分かれます。

住居系(8種類)

用途地域特徴住宅建築
第一種低層住居専用地域低層住宅のための地域。最も規制が厳しい
第二種低層住居専用地域小規模な店舗(150m²以下)も可
第一種中高層住居専用地域中高層住宅向け。大学・病院も可
第二種中高層住居専用地域中規模の店舗・事務所(1,500m²以下)も可
第一種住居地域住居の環境を保護。3,000m²以下の店舗等も可
第二種住居地域カラオケボックス等も可。やや制限が緩い
田園住居地域農業と調和した低層住宅地域(2018年新設)
準住居地域道路沿道の地域。自動車関連施設も可

商業系(2種類)

用途地域特徴住宅建築
近隣商業地域近隣住民の日用品供給のための商業地域
商業地域商業の利便を増進する地域。建ぺい率80%が基本

工業系(3種類)

用途地域特徴住宅建築
準工業地域軽工業の工場など。住宅も建てられる
工業地域あらゆる工場が建てられる地域
工業専用地域工場のための地域不可

住宅を建てられないのは工業専用地域だけです。ただし、用途地域によって周辺環境が大きく異なります。たとえば商業地域ではパチンコ店やカラオケボックスが隣にできる可能性がありますし、工業地域では工場の騒音や臭いが気になる場合があります。

用途地域の調べ方

用途地域は、以下の方法で確認できます。

建ぺい率

建ぺい率とは

建ぺい率は、敷地面積に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合の上限です※2。

建ぺい率(%) = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100

用途地域ごとの建ぺい率

用途地域建ぺい率
第一種・第二種低層住居専用地域30・40・50・60%のいずれか
第一種・第二種中高層住居専用地域30・40・50・60%のいずれか
第一種・第二種住居地域60%
準住居地域60%
近隣商業地域80%
商業地域80%
準工業地域60%
工業地域60%

※都市計画で定められた数値が適用されます。上記は一般的な目安です。

計算例

敷地面積150m²、建ぺい率60%の場合:

建築面積の上限 = 150m² × 60% = 90m²

つまり、1階の床面積は最大90m²(約27坪)です。

建ぺい率の緩和

以下の条件を満たすと、建ぺい率が10%加算されます※2。

  • 角地 — 特定行政庁が指定する角地に該当する場合(+10%)
  • 防火地域内の耐火建築物 — 防火地域内で耐火建築物を建てる場合(+10%)

両方に該当すれば+20%となります。商業地域(80%)で両方に該当すると建ぺい率100%(敷地いっぱいに建築可能)になります。

容積率

容積率とは

容積率は、敷地面積に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合の上限です※2。

容積率(%) = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100

用途地域ごとの容積率

用途地域容積率
第一種・第二種低層住居専用地域50〜200%
第一種・第二種中高層住居専用地域100〜500%
第一種・第二種住居地域100〜500%
商業地域200〜1300%
準工業地域100〜500%
工業地域100〜400%

計算例

敷地面積150m²、容積率100%の場合:

延べ床面積の上限 = 150m² × 100% = 150m²

2階建てなら、1階80m² + 2階70m² = 150m²が上限です。

前面道路による容積率の制限

前面道路の幅員が12m未満の場合、「前面道路の幅員 × 法定乗数」で算出した数値と、都市計画で定められた容積率のうち、小さいほうが適用されます※2。

法定乗数は用途地域によって異なります。

用途地域法定乗数
住居系4/10(0.4)
その他6/10(0.6)

: 第一種住居地域、都市計画上の容積率200%、前面道路の幅員4mの場合:

4m × 0.4 × 100 = 160%

都市計画上は200%ですが、前面道路による制限で**160%**が適用されます。

斜線制限

建物の高さに関する制限で、周囲の日照や通風を確保するために定められています※2。

道路斜線制限

前面道路の反対側の境界線から一定の勾配で斜線を引き、その範囲内に建物を収める必要があります。

  • 住居系: 勾配1:1.25(水平1に対して高さ1.25)
  • 商業系・工業系: 勾配1:1.5

道路幅員が狭いほど、建物を高くできる範囲が狭くなります。セットバックが必要な土地では、セットバック後の道路幅員で判断します。

北側斜線制限

北側隣地の日照を確保するための制限で、以下の用途地域に適用されます。

用途地域立ち上がり高さ勾配
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域5m1:1.25
第一種・第二種中高層住居専用地域10m1:1.25

北側の敷地境界線から「立ち上がり高さ + 勾配」で引いた斜線の中に建物を収める必要があります。

隣地斜線制限

隣地境界線からの高さ制限です。低層住居専用地域では絶対高さ制限(10mまたは12m)があるため適用されず、中高層以上の地域で適用されます。

  • 住居系: 20mの立ち上がり + 勾配1:1.25
  • 商業系・工業系: 31mの立ち上がり + 勾配1:2.5

一般的な2階建て住宅(高さ約7〜9m)では隣地斜線制限が問題になるケースは少ないですが、3階建てを検討する場合は注意が必要です。

日影規制

中高層の建築物が周囲に長時間の日影を落とすことを防ぐための規制です※2。対象となるのは一定の高さを超える建物で、用途地域と地方自治体の条例によって基準が異なります。

用途地域対象建築物
第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域軒高7m超 または 3階建て以上
その他の住居系地域高さ10m超

一般的な2階建て住宅(軒高6m程度)では日影規制の対象にならないことが多いですが、3階建てや屋根の高い設計の場合は確認が必要です。

防火地域・準防火地域

市街地の火災を防止するために、都市計画で指定される地域です※3。

区分主な制限
防火地域原則として耐火建築物。3階以上または延べ床面積100m²超は耐火建築物が必須
準防火地域4階以上は耐火建築物。3階は準耐火建築物以上。延焼のおそれがある部分に防火措置が必要

防火地域・準防火地域に指定されていると、外壁や窓に防火仕様が求められるため、建築費が上がる傾向があります。特に防火窓(網入りガラスや防火サッシ)は通常の窓より高額です。

土地の購入前に防火地域・準防火地域の指定状況を確認し、建築会社に追加費用の見積もりを依頼しましょう。

低層住居専用地域の絶対高さ制限

第一種・第二種低層住居専用地域および田園住居地域では、建物の高さの上限が10mまたは12mに制限されます※2。都市計画で定められた数値が適用されます。

この制限により、一般的にはこれらの地域では2階建てまでが標準的です。3階建てを計画する場合は、高さ制限と北側斜線制限の両方をクリアする必要があり、設計上の制約が大きくなります。

調べ方と注意点

1つの土地に複数の用途地域がかかることがある

敷地がちょうど用途地域の境界線にまたがっている場合、面積の大きいほうの用途地域の制限が建ぺい率・容積率に適用されるのではなく、それぞれの面積按分で計算します※2。

地区計画・建築協定にも注意

用途地域の制限に加えて、地区計画建築協定でさらに厳しい制限が課されている場合があります。たとえば「外壁後退距離1.5m」「建物の高さ上限8m」などの独自ルールが設けられていることがあります。

これらは重要事項説明で説明されますが、事前に市区町村の都市計画課で確認しておくと安心です。

出典

  1. 都市計画法 第8条、第9条(用途地域) https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000100
  2. 建築基準法 第52条(容積率)、第53条(建ぺい率)、第56条(建築物の各部分の高さ)、第56条の2(日影規制) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201
  3. 建築基準法 第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000201