概要

気に入った土地が見つかったら、いよいよ契約です。土地の売買契約は、不動産会社を通じた手続きが中心となりますが、契約書にサインすれば法的拘束力が生じるため、内容を十分に理解しておく必要があります。

この記事では、買付証明書の提出から売買契約の締結までの流れ、重要事項説明で確認すべきポイント、手付金やローン特約の仕組みを整理します。

契約までの流れ

土地の購入は、一般的に以下のステップで進みます。

ステップ内容期間の目安
1. 買付証明書の提出購入の意思を書面で売主に伝える即日〜数日
2. 住宅ローンの事前審査金融機関に借入の可否を確認する1〜7日
3. 重要事項説明宅地建物取引士が物件の詳細を説明する契約日の前日〜当日
4. 売買契約の締結契約書に署名・押印し、手付金を支払う重要事項説明と同日が多い
5. 住宅ローンの本審査契約書に基づき金融機関が正式審査する1〜3週間
6. 決済・引き渡し残金を支払い、所有権が移転する契約から1〜2ヶ月後

買付証明書(購入申込書)

買付証明書とは

買付証明書は、「この土地をこの条件で購入したい」という意思を書面で示すものです。「購入申込書」と呼ぶこともあります。

記載内容説明
購入希望価格売出価格そのままでもよいし、値引き交渉を含めた金額でもよい
手付金の額売買契約時に支払う手付金の希望額
契約希望日いつまでに契約したいか
ローン利用の有無住宅ローンを利用する場合はその旨を記載
有効期限通常1〜2週間程度

法的拘束力はない

買付証明書は法的拘束力のない書面です※1。提出後に購入をやめても、原則としてペナルティはありません。ただし、売主側も買付証明書をもとに他の購入希望者への対応を止めることがあるため、安易な提出は避けましょう。

重要事項説明

重要事項説明とは

重要事項説明は、宅地建物取引業法第35条に基づき、宅地建物取引士が売買契約の前に行う法定の説明手続きです※2。不動産会社(宅地建物取引業者)には、この説明を行う義務があります。

確認すべき項目

重要事項説明書は数十ページに及ぶことがありますが、特に注意すべき項目を以下にまとめます。

法令上の制限

項目確認ポイント
用途地域何が建てられるか。周辺に商業施設や工場が建つ可能性
建ぺい率・容積率建てられる建物の大きさの上限
高さ制限・斜線制限3階建てが可能かどうか
接道義務・セットバックセットバックが必要かどうか。有効敷地面積はいくらか
防火地域・準防火地域指定がある場合、建築コストが上がる
地区計画・建築協定追加の建築制限がないか

ライフライン

項目確認ポイント
上水道引込済みか、口径は何mmか。引込工事が必要な場合の費用
下水道下水道が整備されているか。浄化槽が必要か
ガス都市ガスかプロパンか
電気供給状況。引込線の経路

ハザードマップ

2020年の法改正により、水害ハザードマップ上での物件の所在地の説明が義務化されています※3。

確認ポイント
洪水ハザードマップ上の位置と浸水深
内水ハザードマップ上の位置(作成されている場合)
高潮ハザードマップ上の位置(作成されている場合)

私道負担

項目確認ポイント
私道負担の有無敷地の一部が私道に含まれるか
私道の面積負担面積分は有効敷地面積から差し引かれる
通行・掘削の同意書面での合意が取れているか

その他の重要事項

項目確認ポイント
土壌汚染過去の土地利用(工場跡地など)による汚染の有無
地盤の状況過去の地盤調査データがあれば開示されているか
埋設物地中に古い基礎、浄化槽、井戸などが残っていないか
境界の確定隣地との境界が確定しているか。境界標の有無
造成宅地防災区域大規模盛土造成地に該当するか

説明を受ける際の注意

  • 事前に書面を入手する — 重要事項説明書は、できれば契約日の数日前にコピーをもらい、自宅で熟読しましょう。当日その場で初めて読むのでは内容を十分に理解できません
  • わからないことは必ず質問する — 専門用語が多いですが、理解できないまま署名してはいけません
  • 建築会社にも確認してもらう — 重要事項説明書のコピーを建築会社に見せ、建築上の問題がないか確認してもらうことをおすすめします

手付金

手付金とは

手付金は、売買契約の締結時に買主が売主に支払うお金です。法的には「解約手付」の性質を持つことが一般的です※4。

手付金の相場

項目内容
相場売買代金の5〜10%
上限(不動産会社が売主の場合)売買代金の**20%**以下(宅地建物取引業法による制限)※2
支払い方法契約日に現金または振込で支払う

: 土地代金2,500万円の場合、手付金は125万〜250万円程度が目安です。

手付解除の仕組み

手付金には、一定の条件で契約を解除できる「解約手付」の機能があります。

解除する側方法結果
買主が解除する場合手付金を放棄する(手付流し)支払った手付金が戻ってこない
売主が解除する場合手付金の倍額を返還する(手付倍返し)手付金 + 同額を買主に支払う

ただし、手付解除には期限があります。「相手方が契約の履行に着手するまで」が解除可能な期間です※4。売主が所有権移転登記の準備を始めたり、買主がローンの本審査を通過したりすると、履行の着手と判断される場合があります。

手付金と頭金の違い

手付金は契約の担保として支払うもので、決済時に売買代金の一部に充当されます。頭金(自己資金)は住宅ローンで借りない部分の自己資金を指します。手付金は最終的に売買代金の一部になりますが、性質が異なる点に注意してください。

ローン特約

ローン特約とは

ローン特約(融資利用の特約)は、住宅ローンの本審査に落ちた場合に、無条件で契約を解除できる特約です※5。

項目内容
目的ローン審査に落ちた場合、買主を保護する
効果手付金を含む支払済みの金銭が全額返還される
期限契約書に定めた期限まで(通常、契約から1ヶ月程度)

なぜ重要か

ローン特約がなければ、住宅ローンの審査に落ちた場合でも手付金を放棄して解約するか、違約金を支払う必要があります。住宅ローンを利用する場合は、ローン特約は必須です。

確認すべき内容

確認ポイント内容
特約の有無契約書にローン特約が明記されているか
対象の金融機関どの金融機関のローンが対象か。「A銀行の審査に落ちたがB銀行で借りられる」場合はどうなるか
借入額特約の対象となる借入額が明記されているか
期限いつまでにローンの承認を得る必要があるか
解除の手続き書面での通知が必要か

注意点

  • 期限を過ぎるとローン特約は使えない — 期限管理を徹底してください
  • 事前審査は通っても本審査で落ちることがある — 転職、新たな借入の発生、健康状態の変化(団信に加入できない)などが原因
  • 特約の条件は契約ごとに異なる — 「いずれかの金融機関で承認が得られなかった場合」なのか「指定の金融機関で承認が得られなかった場合」なのかで適用範囲が変わります

契約不適合責任

契約不適合責任とは

2020年4月の民法改正により、旧「瑕疵担保責任」に代わって導入された制度です※6。引き渡された土地が契約の内容に適合しない場合、買主は売主に対して以下の請求ができます。

請求内容
追完請求契約内容に適合するよう修補を求める
代金減額請求追完が不能な場合等に代金の減額を求める
損害賠償請求契約不適合により生じた損害の賠償を求める
契約解除契約の目的を達成できない場合に解除する

土地の売買で問題になりやすいケース

ケース内容
土壌汚染引き渡し後に土壌汚染が発覚した場合
地中埋設物古い基礎やコンクリートガラが地中に残っていた場合
面積の相違実測面積が登記面積と大きく異なる場合
境界紛争引き渡し後に隣地との境界について争いが生じた場合

契約書で確認すべきポイント

  • 責任の期間制限 — 契約不適合を知った時から「何年以内に通知が必要か」を確認。個人間売買では「引き渡しから3ヶ月」などに限定されるケースもあります
  • 免責特約の有無 — 個人の売主が「契約不適合責任を負わない」とする免責特約が付いている場合があります。この場合、買主は自費で対応する必要があります
  • 不動産会社が売主の場合 — 宅地建物取引業法により、通知期間を「引き渡しから2年以上」とする特約以外は無効とされ、買主が保護されます※2

契約時のチェックリスト

売買契約を結ぶ前に確認すべき項目のリストです。

カテゴリ確認項目
重要事項説明事前に書面のコピーを入手し、熟読したか
重要事項説明建築会社にも確認してもらったか
法令制限用途地域・建ぺい率・容積率を理解しているか
法令制限セットバックの有無と有効敷地面積を把握しているか
ハザードマップ水害・土砂災害・液状化のリスクを確認したか
ライフライン上下水道・ガス・電気の整備状況を確認したか
境界隣地との境界が確定しているか
手付金金額と支払い方法を確認したか
ローン特約特約の内容と期限を確認したか
契約不適合責任責任の範囲と期間を確認したか
スケジュール決済日・引き渡し日を確認したか

出典

  1. 公益社団法人 全日本不動産協会「買付証明書の法的性格」— 買付証明書の提出だけでは売買契約は成立しないとする実務解説 https://www.zennichi.or.jp/law_faq/%E8%B2%B7%E4%BB%98%E8%A8%BC%E6%98%8E%E6%9B%B8%E3%81%AE%E6%B3%95%E7%9A%84%E6%80%A7%E6%A0%BC/
  2. 宅地建物取引業法 第35条(重要事項の説明等)、第39条(手付の額の制限等)、第40条(瑕疵担保責任についての特約の制限) https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176
  3. 宅地建物取引業法施行規則の改正(令和2年8月28日施行)— 水害ハザードマップにおける所在地説明の義務化 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_fr3_000074.html
  4. 民法 第557条(手付) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
  5. 公益社団法人 全日本不動産協会「Vol.34 売買契約における融資利用特約に関する留意点と対応について」— ローン特約は契約条項として定める実務上の特約であることの解説 https://magazine.zennichi.or.jp/trouble/21729
  6. 民法 第562条〜第564条(買主の追完請求権、代金減額請求権、損害賠償の請求及び契約の解除) https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089